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2012年03月20日 2010年3月16日「小出シンバルカスタムオーダーイベント at 豊橋シライミュージック」から2年。浅草コマキ楽器やドラムマガジンフェスティバルでハンマリングを体験するというイベントが開かれたり、シライミュージックの白井としみつ君がシンバル個体を視聴できるシンバル動画を大量にアップしツイッターでも宣伝を繰り返す中、小出シンバルに対する認知度や「自分でハンマリングする」なんて今まで聴いたこともなかったことに関心を寄せるドラマー達が増えたように思います。 そして満を持して行われたのが、おそらく世界初!?「シンバルを自分でハンドハンマリングして自作する」というシンバル製作セミナーでした。18インチのクラッシュライドという前提で、カップのサイズや厚さなどプリオーダーした原盤を、セミナー当日に1人2時間見当の中でトンカントンカンとハンマリングして形にしていくというものです。このセミナーは多少の予告がツイッターなどであったものの、予約開始してすぐに定員になるという反響ぶり。これ、当然のことながら材料費も含んでいますから費用もそれなりにかかるし、自分でハンマリングするのは容易いことではないわけで、そういうことにこれだけの関心が集まるのは凄いなと思うわけです。実際、小出社長は「なんであんなことしたがるのか今でもよくわからん」くらいのことをおっしゃっていました(笑)いやもうみんなやる気まんまんです。 そしてその製作セミナーの翌日に、カップリングとして2年前のようなセミナーイベントが行われ、私はそこで話したり音を出したりさせていただきました。この2daysのために、編集&ライターの村田誠二氏や中野正敏君も(飛び入り?)参戦していただき、なにやら大変に熱い二日間となりました。ハンマリングは、3人1組で午後1時から行われました。シライミュージックのレンタルスタジオの中にハンマーや鉄床、材料、軍手や耳栓なども用意され、基本的な指導の後、とにかく叩いていきます。これ、やってみた人は痛感するんですが、単純な行為でありながらどこに納得を感じていいのかわかりにくいのですね。グワンとたわんだ原盤を、ガシンガシンと叩いても、10発や20発では手応えもなにもあったものではありません。実際、参加者の方々も最初はなにか困ったような感じで手探りでやっている様子もあり、こちらで見ていても「どうなるかな...」と思わずにはいられないところがありました。 豊橋到着。駅には豊の字をもじったトヨッキーがお出迎え。豊橋駅から渥美線に乗って南栄へ。写真に映っているのは編集&ライターの村田さん。駅から歩いてすぐシライミュージック到着。なんだかんだよく来るようになったなぁ。相変わらず濃い店内!まず1組目のハンマリングメンバー。諸々説明を受けています。ハンマリング開始!最初はこんな形です。全然やわらかいものではなく、トンカントンカンと始まります。小出社長の指導が入ります。なんとあのグニャっとした状態から、こんなにも形になってきました!小出社長も厳しい目でチェック。チェックしたポイントを修正すべく、少し裏から叩いている様子。こんなふうにエッジを調整することも。どうですかこのシェイプ!素晴らしい!これも他の方の仕上がりです!皆綺麗な形になっていきました。豆が出来ました...との報告もw左から近並さん、マキタさん、鈴木さん。3人とも満面の笑み!最高です!お疲れさまでした!さて、その裏側では翌日のセミナーに向けて設営をば...シンバルの音を客席でよく聞いてもらうには、ということでドラムセットはこんな配置。右側の壁もあいまってシンバルの低域も客席によく伝わっていました。村田さんに撮ってもらいました。ちょっと休憩タイム。30過ぎのオトナが揃って携帯...w3組目の方が終わり、村田さんがインタビュー。2日目、この日の朝の新聞になんと昨日のハンマリング製作の記事が掲載されていました。いやぁ凄いです。そしてこの日はセミナー形式で、小出社長にシンバルのあれこれを話していただく形です。そこに私も参戦させていただきました。2年前の時から、更に新しいプロジェクトも進み、プロトタイプなシンバル達が揃っておりました。前日の製作セミナーの裏側で会場の設営をしながら、「どうやってセッティングしたらシンバルの音が届くだろう」と、お客さんにお尻を向ける形になりながらも、今回のプロトタイプの中でもサウンド的にもトピック的にも意義のあるモデルをセッティング。正直、シンバル叩いているだけでいくらでも楽しめる感じでした。これが、セミナー後は飛ぶように売れてしまいましたが...。 セミナーは前半がUstreamで配信される形式の中で進められました。私が言いたかったのは以下のような感じでした。 ・2年前から今日までに起きたこと 私は、特定のメーカーのエンドース契約などしていません。自分の使いたいシンバルはなんでも使ってきました。そんな立場から言えることを言いたかったというのはあるのですが、なんだか言わなきゃならんことがたくさんありすぎてカオスではありました。後でシライミュージックのイベントなのに浅草コマキ楽器の部分が長いとか怒られたり...テヘペロ。 そして私がしゃべりすぎたところで、小出社長にバトンタッチして解説が始まりました。まず、小出シンバル誕生というところから、シンバル製作の苦労話や実際にやってこられたことをかいつまんで話して頂きました。そして、個人的に今回の核心と思われる「国産B20」について。まぁこのあたりは詳細はシライミュージックのアーカイブ参照とするべきでしょうけれども、今現在小出シンバルが出荷しているものとしては、Sentitiveと呼ばれる「合わせシンバル」に使用されているとのことで、この材料を使ったドラムセット用のプロトタイプの話になったところで、会場の皆さんに音を聞いてもらいました。ちなみに、あんなに素晴らしいプロトタイプ達を、私は音に集中しすぎて、ちっとも写真とっていませんでしたorz。 前日の様子が早速新聞に!すごい!セミナー前の会場にてお客さんもかなり集まって参りました!Ustreamしながらツイッターのタイムラインやプロジェクタには資料画像や動画など表示されました。これはセミナー終了後、いつまでも熱い参加者の皆様。一応断りをしておくと、私は小出シンバルが国産メーカーだから凄いとか、海外メーカーがどうだとか、小出シンバルだけがなにか特殊だとかいうつもりはありません。あくまで楽器は楽器です。しかし、評価されるべきものが評価されないのはとても残念だし、マニアック、みたいな免罪符のような言葉で揶揄されがちな情報も、実は良い音を出すために研究された製法の裏側であれば、それは使う側も知るべきだと思うのです。この10年で小出シンバルが行なってきたことは、私は奇跡的なことだと思っています。そしてまだまだまだまだこれからも前に進んでいくことを確信させられるのです。そして現に、そういう情報を共有し体験したいという熱意のある人達がどこからか匂いを嗅ぎつけて集まってきたのがこのイベントだと思います。 このあたり、私の話の組み立てもうまくなかったところでもありますが「合金を国内調達」することが実現しB20の比率を様々に変えて試していること、そして実際目の前に22%や23%のプロタイプが並んでいること、そしてこれらはチタンが混ぜてあるとのこと。こういうことが公開されながらも皆で体験し、今リアルタイムでその過程を共有できることは、本当にすごいことだと思うのです。なにより小出社長は特定の決めつけをせず、音楽的なサウンドの面と、科学的な検証という側面を両立させながら、「シンバル作りに秘密はない」と言う姿勢、わからない部分はわからない、とハッキリ言えるところがやはり凄いなと思うのです。そうこうしているうちに、前半終了でUstreamもここで終わり。休憩を挟んでその後の開放感の中、セミナー参加者からの質疑応答。これは良い質問が多かったと思います。ウェイトの目安、個体差について、小出シンバルの今後など、言わずにおれないことだらけとはいえ、ちょっとしゃしゃり出すぎました。とはいえ、参加者のみなさんがとても熱心で、目もギラギラ!あと5時間くらいやりたいくらいでした。 最後には私の最新教則本から赤本まで紹介させていただき、今回取材にあたっていただいた村田誠二さん、飛び入りで会場入りしてくれたピエール中野君も紹介することができました。そしてセミナーが終了して試打会。みんな思い思いにシンバルを叩きながら、気がつけばどんどんスタンドから無くなっていきます...あれ?と思ったらこのプロトタイプ売っちゃいますってことで、あちゃーそれなら俺も...と思ったのは後の祭り...いやいや参加者優先に決まってますw そしてたくさんの人が教則本まで買ってくれてサインさせていただいたり、ツイッター上でやりとりしている方々と顔とアイコンがつながっていったりと時間があっという間に過ぎて行きました。 とにもかくにも2年越しにこんなイベントを企画実施したシライとしみつ君の牽引力と、彼を中心とした豊橋コミュニティの熱さには最大の敬意と感謝をもって脱帽しつつ、確実に進歩を続けられている小出社長の活動には心から今後のご活躍をお祈りする次第です。自分はインフルエンザの病み上がりで当日昼まで咳が止まらずヒヤヒヤしましたが、セミナー中は何度も喉がムズムズしたものの、思ったよりはマシだったことに一番ホッとしているという程度のポンコツでした。はいすいません。
このイベントはとても熱気のあるものでした。いやこれは実際に掛け値なしで参加者の方々自身が感じたと思います。熱意がハンパなかったのです。東京から来ていたの人も多かったですが、なんと青森から来ていた方も。シンバルの魅力、楽器の魅力、ドラムの魅力なのでしょう。そしてツイッターなどで日を重ねながら密に情報が伝わる中での期待感や信頼感というものもあると思います。すべての人に温度差が無いとは言いませんが、ある程度の前提を共有していたと思うし、朴訥とした気持ちで集まってきた方々が、ともすれば帰りにシンバルを手にしながら帰っていく姿を見るに、素晴らしい機会だったと思います。 と、こういうことを前提とした上で、自分としていろいろ思うこともありました。ただ、ちょっと個人的な内容なので、あくまで個人の文責において、今回のイベントそのものとは別ということで書かせていただくことをお許しいただきたいと思います。楽器というものについてというか、セミナー中にも次のような話が出ました。それは、自分がハンマリングしたものが、なぜかしっくり来るというものです。これはセミナー準備中に私がマキトシンバルをセッティングして同じ時にシライ君が作ったシンバルを並べて叩いた時に、お互いに自分の関わったものはなにかしっくり来るところがあるという話になりました。ハンマリングしたとは言っても、私の場合はマシンハンマリングだったし、自分でやったんだから、というだけで具体的な材料はそれほど無い。しかしかつて無いほどに納得がある。これは何か。心なのか。残留思念というキーワードももらったが、オカルトと言われればそれまでかもしれない。でも、そうとしか思えないくらいの何かを感じているのも事実。 そしてもうひとつ、メーカーというものについて。セミナー中に、小出社長がプロトタイプのクラッシュをさして、これは〇〇社の〇〇に似てるから企業倫理としては出しにくい、という話をしていました。メーカというのは、安定した品質である程度の量を確保するハードルがあったり、偶然の産物を追い求めるようなことはできないという面もあるし、他のメーカーが存在すれば似たようなものは出してもしょうがないというような面もあるかと思います。 しかし使う側からすれば、それが邪魔な場合もあります。真白なシャツになんのロゴも入っていない良さというのはあります。もちろんそもそもシャツとしての機能性がデザインであり、生地やシルエットなどで語る部分はあるとは思いますが、名も無いものの良さというのはあると思うのです。現代は、名も無きもの、言い換えると主張のないものが存在しにくいというか、価値として認められにくいというか。力を付ける、知名度が上がる、収入が上がり、ブランド化していく...。「普通」という言葉はよく使われるのに、本当に普通なものというものがどれだけ存在しているのか。メーカーの色付けとともに、流通で付けられる付帯情報。自分もここに多少加担しているわけだけれど、即効性はあるけれど、長い目で見ると自分たちで自分の首絞めてないかなとも思う。個別の方法論についてみないとなんとも言えないけれど。 消費者側の心理として、ブランド名が入っているものを選びたくなる面もあるでしょうし、ともすれば「何も入っていない」ということすらブランド化してるわけで。昨日のセミナー後「初めて聞く音だけれど、前からよく知っていたような音」とツイートしていた参加者の方がいました。これは私も同感で、言ってみればおろしたての上質な白い紙を机の上に置いた時のようなワクワク感なのです。清々しさと言ってもいいかもしれません。無論これがメーカーという存在とはバッティングしない方法はたくさんあると思いますが、現実的にはワクワクする白い紙はあまり手に入りません。セミナー中に言った無垢という言葉は、これも正しいのかもう一度調べないといけないなぁ。自然な響きってことなのですけれど。自然な反応をして特殊な色が付いていない、そんな無垢なシンバルを欲するには、今の業界が多様化しすぎているのか、それとも企業が企業としての存在のために避けなければならないことが多いのか。自分が駄々をこねているようでもあり、なんだか本来のスジはどこにあるんだろうという気持ちもあります。たとえば、昼飯に炊きたてのご飯に納豆かけたものをサクっと食べたいと思っても、それだけで食べられるところなんて無い。そんな感じでしょうか。違うかwww なぜ自分で叩いたものがしっくりくるのか。白い紙は商品として存在し得るのか。それを欲することは即ち何なのか。実はセミナーが始まってマイクを持った時からそれが頭に浮かんできました。喋りながら疑念を持つのは危険ですが、湧いてきてしまったものを抱えながら、その答えのベクトルが、参加者のお客さんを見るとあっちに振れ、小出社長を見るとあっちに振れ、シライ君を見ればとっち、いやこっちに振れ、村田さんを見れば、中野を見れば...と自動的にシミュレーションが始まる始末。おいおいこのポンコツオヤジは、またこんな時にいらんことを...。 また、セミナー終了後中野から「聞いていると欲を刺激されるんですよね、なんなんでしょうか」と言われ、まぁ確かにそこをくすぐるのもこういうイベントの主旨のひとつではあるかと。あとは集まった人達の熱意がムンムンだったのも間違いない。欲には堕落していく欲もあれば、成長する欲もある。自分はどっちを振りまいているのか。セミナーなんだから成長する欲なんだろうなオイ的な。ま、なんにしろバランスだとは思うけど。まったくもってシンバルってのは科学なのか生き物なのかオカルトなのか。もしくはシンバルはただの物だけれども、実は楽器は強力な触媒であって、人間が科学脳になったり生物脳になったりオカルト脳になったり物欲脳になったりするのか...。 ハワイからUstで見ていただいていたヤリエモンさんという方が、エクトプラズムになって飛んでいきたいとツイートされていたけれども、そういうことがもしあるとすれば、自分はどこに飛んで行くだろうか。良い水の匂いを嗅ぎつけるかのように、良いシンバルを嗅ぎつけて飛んで行くのか。それとも良い音がする場所に行くのか。なんにしろ、なんだかすごくホッとして脱力したのは、あぁこんなにシンバル好きな人いるんだ、ハンマリングを終えて興奮していた参加者の人達、自分がシンバル鳴らした瞬間に頬がほころんだ人達、全然ここにいるんじゃん、と。 そろそろ自分のシンバルの旅は終わりかもしれない。脱力はそんなことも示唆していました。ちょっと寂しいしけれど、それを感じることができたのが、小出の日で良かったなと思う。次はどこへ向かおうかな〜。とはいえ国産チタン入りB20はセットで揃えたいものです、これ必須!ともすれば、旅が終わるというのは、場所を決めて畑を耕すことが課せられているのかもしれません。ふふふ。 あーそれにしてもあのプロトタイプをお持ち帰りした人達うらやましい〜!小出社長には、日本が誇るドラムセットシンバルを更に世に送り出していただきましょう!そしてみんなで世界中の音楽好き、楽器好き、ミュージシャン、クラフトマン、楽器店、メーカーが何をしているか共有し応援しあおう!話はそれからだ! |